なぜ、税理士業は無償独占業務なの? | 大阪市の創業支援ならコンフロント税理士法人(大阪市北区)(旧衣笠・いまい合同税理士事務所)

先日、税理士登録時研修を受けてきました。最近登録した者を対象に3日間に渡って近畿税理士会の会議室で開かれる研修です。長時間に渡る研修ですが、周りは結構熱心にメモをとり、講師の先生に向かい合う方々ばかりで、税理士業の未来は明るいと確信を持てる時間でした。私が大学院で修士論文を執筆した際に、かなり参考にさせて頂いた有名な先生も講師で来られており、単純に有名人に会えた気分で嬉しかったです。参考文献にさせてもらうような書籍を執筆されている先生の言葉は、やはり重く感じました。

 

研修目的は、租税法は勿論、憲法、民法、会社法、行政法等の基礎知識の確認です。この研修の中で私が一番心に残ったことは、税理士法の解説でした。税理士法2条において、税理士業が定められています。大きく3つ、「税務代理」「税務書類の作成」「税務相談」が税理士業になります。そして、税理士法52条はこれらの業務は、税理士の無償独占業務であることを定めています。ここでポイントになるのが無償独占ということです。無償独占とは、報酬をもらう、もらわない関係なく、税理士以外は税理士業を行ってはいけないということになります。これは、士業の中で税理士業だけのようです。例えば、弁護士ではない人間が、無償で法律相談を受けても問題はありません。大学の法律研究サークルなどは、無償で一般人の係争トラブルについての相談を受けていますが、それは無償なので問題ないというロジックになります。一方で、大学の税務研究サークルが無償で税務相談を受けると、それは税理士法違反になります。これは税理士業が無償独占であるためです。

 

では、なぜこのような仕組みになっているのでしょう?これは、決して税理士会が強いからでも圧力があるからでもありません。税金に関する間違ったアドバイスは、国家に影響し、それは国民全体の資産に毀損を及ぼす可能性があるからです。例えば、弁護士でない人間が、離婚についての無料法律相談を受けミスリードをしたとしても、その被害を受けるのはその相談した人のみです。しかし、税金に関する相談でミスリードをし、納税額が過少になった場合は、国家予算に影響を及ぼします。その穴埋めを行うのは、過少納税を行った人以外の国民全員になります。税理士業はこのように本人以外に影響を及ぼす可能性が高いため、有償無償関係なく税理士が独占する業務になります。

 

税理士法1条において、税理士の使命が定められており、「独立した公正な立場」が極めて強調されています。お客様から報酬を頂いているため、どうしてもお客様を守ることに注力しがちになりますが、本来は常に公正な立場で業務を行わないといけません。勿論、お客様からは報酬を頂いていますが、一方で、国からは立場(資格)と使命を受けているため、独立した公正な立場を堅持することについて異論を唱えるのは難しいと思います。

 

非常に身の引き締まる研修でした。税理士業は、将来、消える職業の常に上位に陣取っています。それをテーマに行われるセミナーなども数多くあります。税理士受験者数も順調に減っているそうです。一番悲しいことは、20代には魅力を感じない職業の1つということです。税理士業は1円を合わす職業ではありません。むしろ、合わさなくていいと思います。だから逆にロボットには出来ない業務だと思っています。ロボットは1円を合わさなくていい空気を読む力がありません。そしてお客様からも国家からも期待されていて、業務を独占できるなんて魅力しかないと思います。私は、この職業は天職だと思っています。研修を経て、税理士業の無限の魅力を下の世代に伝えていくべきだと強く感じました。今後は、小学校、中学校などへの租税教室などにも注力していきたいと考えています。


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